太陽光発電は元が取れる？回収できるまでの期間や元を取れないケースも紹介

「太陽光発電は今から導入しても元は取れる？」

「元を取るための方法はあるの？」

太陽光発電を導入して経済効果を得たいものの、本当に元が取れるのか心配な方も多いでしょう。太陽光発電は基本的に元を取れる設備ですが、発電状況などによっては元が取れないケースもあります。

どうすれば元が取れるかを知っていないと、導入しても経済効果を実感できないかもしれません。導入後に後悔しないためには、元が取れるケースと取れないケース、元を取りやすくする方法を知っておくことが重要です。

そこで本記事では、いま太陽光発電を導入しても元が取れる理由や、コストを回収できるケースとできないケースを紹介します。さらに、元を取りやすくする方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

太陽光発電が今から導入しても元が取れるのはなぜ？

太陽光発電は今から導入しても元を取ることは可能であり、一般的には10年前後で回収できます。その理由は、大きく分けて下記の4つです。

導入費用が下降傾向にあるから

太陽光発電は、導入費用が下降傾向にあるため、今から導入してもコストの回収が可能です。2012年は新築住宅で1kWあたり43.1万円だったのに対し、2023年は26.9万円と約40％も価格が下がっています。

2024年時点では、やや価格が上がっているもののほぼ横ばいであり、2012年時点と比較すると大きく下がったままです。費用が下がっている分コストの回収スピードが速くなるため、元が取りやすくなっています。

電気代が高騰しているから

電気代が高騰しているのも、太陽光発電の元が取りやすくなっている一つの要因です。電気代は2010年から上昇傾向にあり、2022年にピークを迎えています。

2010年と2022年を比較すると1kWhあたり約13円も高騰しているのです。

2023年には、ピーク時から5円ほど単価が下がったものの、2010年と比較すると約7円も上がったままです。電気代が高騰している時期に太陽光発電を導入して電気代を削減すれば、導入しない場合と比較して元が取りやすくなります。

今後も電気代の高騰は続いていくと考えられているため、さらに元は取りやすくなるでしょう。

様々な補助金制度が誕生しているから

現在は太陽光発電に関する補助金制度が充実しており、初期費用を抑えられるため、コストの回収がしやすくなっています。太陽光発電の補助金制度が充実しているのは、環境省が2050年までに脱炭素社会を実現することを目標としているからです。

太陽光発電を導入する家庭が増えると脱炭素社会の実現が近づくため、様々な補助金制度が用意されるようになりました。補助金は必ず毎年実施されるとは限りません。

豊富にある今だからこそ、補助金を利用して導入しておくことがおすすめです。

なお、次の記事では太陽光発電の補助金を詳しく紹介しているので、あわせて参考にしてください。

高性能な製品が増えたから

太陽光発電を今導入しても元を取れるのは、高性能な製品が増えたからです。日本で家庭用の太陽光発電が導入され始めたのは1993年からと歴史が長く、現在まで様々なメーカーが品質改良を行ってきました。

そのため、発売当初よりも機能性が良く、発電量を担保しやすい製品が増えているのです。発電量が多いと節約できる電気代や売電できる電気量が増えることから、回収速度が早まりやすいと言えます。

元を取るまでの時間が短くなるため、必然的に元が取りやすくなるということなのです。

【シミュレーション付き】太陽光発電で元が取れるケース

ここからは、太陽光発電で元が取れる具体的な2つのケースを見ていきましょう。

それぞれシミュレーションと併せて紹介するので、どのような条件下の場合どの程度の速度で元が取れるのかも確認してみてください。

売電収入を得ながら自家消費を行う場合

太陽光発電で元が取れるケースは、売電収入を得ながら自家消費を行う場合です。今回は、下記の条件でシミュレーションし、検証していきます。

なお、スタンダードSのプラン内容は、下記の通りです。

売電収入は、買取単価15円が続くと仮定してシミュレーションを行います。まずは、売電できる年間の発電量を求めていきましょう。

年間の発電量5,000kWh×自家消費できなかった発電量の割合70％＝年間で売電できる発電量3,500kWh

この3,500kWhの電気量を電力会社へ売電する場合、年間の売電収入は以下の通りです。

年間で売電できる発電量3,500kWh×FIT適用時の買取単価15円＝年間の売電収入52,500円

続いて、自家消費できる年間の発電量と電力会社から賄う電気量を求めましょう。

年間の発電量5,000kWh×自家消費率30％＝自家消費できる年間の発電量1,500kWh（月間125kWh）

年間の消費電気量3,950kWhー自家消費できる年間の発電量1,500kWh＝電力会社から賄う年間の電気量2,450kWh（月間205kWh）

「自家消費できる発電量＝節約できる電気量」のため、太陽光発電でいくら節約できるのかを計算します。なお、今回契約しているスタンダードSプランは月間の電気使用量に応じて金額が変わるため、まずは月間で節約できる電気代を考えます。

電力会社から賄う月間の電気量205kWhを超えた125kWh分の電気代を節約できるため、節約できる電気代は以下の通りです。

95kWh×スタンダードプランSの121kWh〜300kWh時の金額36.40円＋30kWh×スタンダードプランSの301kWh〜時の金額40.49円＝月間で節約できる電気代4,673円（＝年間56,076円）

月間で4,673円節約できるため、年間だと56,076円の電気代が節約できる計算になります。この年間の節約代と売電収入を合わせると、下記の通り、太陽光発電を導入したことで得られる経済効果が算出できます。

年間の売電収入52,500円＋年間で節約できる電気代56,076円＝年間で得られる経済効果108,576円

年間の経済効果が分かったため、初期費用から割って元を取るまでの期間を算出しましょう。

初期費用140万円÷年間で得られる経済効果約11万円＝元を取るまでの期間12～13年

今回のシミュレーション条件で太陽光発電を導入すると、12〜13年で元が取れることが分かりました。ただし、厳密にいうとFIT制度適用後の10年後からは売電収入が下がるため、元を取るまでもう少し年数がかかる見込みです。

蓄電池と併用する場合

太陽光発電と蓄電池を併用する場合も、元が取れます。下記の条件でシミュレーションし、検証していきましょう。

スタンダードSのプラン内容は先ほどと同様で、下記の通りです。

売電収入は、買取単価15円が続くと仮定してシミュレーションを行います。なお、太陽光発電も蓄電池も導入しておらず、スタンダードSプランを契約している場合と比較します。

まずは、太陽光発電と蓄電池を導入していない場合の月間の電気代を求めましょう。

120kWh×スタンダードプランSの〜120kWh時の金額29.80円＋179kWh×スタンダードプランSの121kWh〜300kWh時の金額36.40円＋29kWh×スタンダードプランSの301kWh〜時の金額40.49円＝月間の電気代11,267円（＋基本料金）

太陽光発電と蓄電池を導入した場合、年間で掛かっていたはずの電気代がすべて浮くため、節約できる電気代は下記の通りです。

月間の電気代11,267円（＋基本料金）×12カ月＝年間で節約できる電気代135,204円（＋基本料金）

さらに、自家消費しきれず余った発電量は、売電することが可能です。余った発電量をすべて売電した場合、年間で下記の売電収入を得られます。

年間の発電量5,000kWh-年間の消費電気量3,950kWh＝自家消費しきれなかった年間発電量1,050kWh

自家消費しきれなかった年間発電量1,050kWh×FIT制度の買取単価15円＝年間売電収入15,750円

年間で節約できる電気代と年間で得られる売電収入を合わせると、年間の経済効果は以下の通りです。

年間で節約できる電気代135,204円（＋基本料金）＋年間売電収入15,750円＝年間の経済効果約15万円

年間の経済効果が分かったため、初期費用から割って元を取るまでの期間を算出しましょう。

初期費用140万円÷年間で得られる経済効果約15万円＝元を取るまでの期間9～10年

今回のシミュレーション条件で太陽光発電と蓄電池を導入すると、9〜10年で元が取れることが分かりました。太陽光発電のみの導入よりも3年ほど早く費用回収できる見込みです。

ただし、蓄電池の初期費用が掛かるため、蓄電池の費用回収と合わせるともう少し年数がかかると考えておきましょう。

太陽光発電で元が取れないケース

太陽光発電は基本的に元が取れるものの、必ずしもコストを回収できるわけではありません。たとえば、下記のようなケースでは元を取るのが難しいと言えます。

それぞれなぜ元が取りにくいのか確認した上で、状況が当てはまる場合は導入を避けた方が良いでしょう。

初期費用が高過ぎる場合

太陽光発電を導入しても元が取れないのは、初期費用が高すぎる場合です。初期費用が高くなると、その分回収までの期間が長くなるため、太陽光パネルの寿命までに回収しきれない可能性があります。

太陽光パネルの寿命は一般的に25年前後のため、それまでに回収できなければ赤字です。最低でも25年以内にコストが回収できるかどうかをシミュレーションした上で、導入を検討することが賢明です。

なお、初期費用が高くなるのは、高額な太陽光パネルを購入したり工事費が高い業者に施工を依頼したりした場合などです。できるだけ初期費用を抑えるよう工夫しつつ、相場よりも高いメーカーや業者は慎重に検討しましょう。

発電量が低い場合

太陽光パネルの発電量が低い場合も、太陽光発電を導入しても元が取れないケースの一つです。そもそも太陽光パネルは、太陽光が長時間当たりやすい場所に設置しないと、本来の発電量を担保することができません。

発電量が低くなると売電収入が下がったり、電気代の削減額が大きく減ったりし、元を取るまでかなりの時間が必要となります。その結果、太陽光パネルの寿命までに初期費用を回収できず、元が取れない可能性があるのです。

そのため、発電量が低くなりがちな木陰の影響を受ける屋根や、北向きの屋根には太陽光パネルを設置しないようにしましょう。

太陽光発電で元を取りやすくする方法9選

太陽光発電の元を取りやすくするには、次の9つのポイントなどを抑える必要があります。

できるだけ多くのポイントを押さえて、経済効果を高めていきましょう。

コスパの良い製品を選ぶ

太陽光発電の元を取りやすくしたいなら、コスパの良い製品を選ぶのがおすすめです。コスパの良い太陽光パネルを選べば初期費用を抑えられ、コストの回収速度を上げることができます。

ただし、単純に価格が安いだけの製品は選ばない方が良いでしょう。なぜなら、性能が低い太陽光パネルを買うことになり、期待していた効果を得られなくなるなどのリスクがあるためです。

譲れない条件を満たした製品の中で安価なものを選び、コスパの良い製品の購入を目指すのがおすすめです。なお、おすすめの太陽光パネルは次の記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

施工費が安い業者を選ぶ

施工費が安い業者を選ぶのも、太陽光発電の元を取るために重要なポイントです。施工費が安い業者を選べば初期費用を抑えられ、コストを早期に回収しやすくなります。

設置工事に掛かる費用は業者によって違います。そのため、下記のような施工費が安い業者の特徴を満たした業者へ相見積もりを取り、費用を比較した上で依頼先を決めるのが良いでしょう。

ただし、単に見積もりが安い業者を選んでしまうと、悪徳業者に引っかかってしまうリスクがあるため注意が必要です。悪徳業者に引っ掛からないようにするには、見積もりの内訳を聞き、必要な費用がすべて盛り込まれているか確認してください。

また、次の記事でおすすめの太陽光発電業者を紹介しているので、業者の目星が付いていない方はぜひご覧ください。

補助金を利用する

太陽光発電の元を取りやすくするには、補助金を活用して初期費用を抑えるのがおすすめです。太陽光発電に関する補助金は国や県、市区町村によって実施されています。

補助事業ごとに金額は異なり、1kWhあたり12万円支給していたり、1戸あたり55万円支給していたりと様々です。それぞれ満たすべき要件や補助上限額も違うため、まずはご自身が適用できる補助制度がないか確認していきましょう。

蓄電池と太陽光発電を同時に導入する場合は大幅に受給額が上がる可能性があります。実際に300万円以上の受給に成功したケースもあるため、お得に導入したいなら蓄電池との同時導入がおすすめです。

0円ソーラーを利用する

0円ソーラーを利用するのも、太陽光発電の元を取りやすくする方法の一つです。0円ソーラーを利用すると、事業者が初期費用を支払った太陽光発電を自宅に導入することになります。

そして、太陽光発電で得た売電収入などを事業者に支払い、事業者はその売上で初期費用を回収していきます。0円ソーラーを導入する場合、利用者は初期費用を負担せずに済むため、そもそも元を取る必要がないのです。

さらに、導入してから一定期間が経過すると、事業者から無償で太陽光発電を譲渡してもらえることもあります。そのため、初期費用が用意できるか不安だったり、ローンを組まずに気軽に太陽光発電を利用したい方におすすめです。

できるだけ節電する

太陽光発電の元を取りたいなら、できるだけ節電しましょう。節電すると売電に回せる余剰電力が増え、それに応じて売電収入も増加するため、初期費用の回収スピードが早まるのです。

節電は、下記のような行動を意識するだけで簡単に行えます。

また、上記以外でも電気料金のプランを見直すだけで節電につながる可能性があります。今の電気プランよりも安く適切なものがないか、他社を含めて検討しましょう。

シミュレーションを確認する

導入前に太陽光パネルの発電シミュレーションを確認しておくと、あらかじめ元が取れそうかどうか把握することができます。必ずしもシミュレーション通りの発電量が担保できるわけではありませんが、シミュレーションで元が取れていればある程度安心です。

太陽光パネルの発電シミュレーションは、業者に依頼すれば提示してもらえます。ただし、依頼する際は複数社にシミュレーションを出してもらいましょう。

なぜなら、業者によってシミュレーション条件が異なり、自宅に設置した場合の現実的な数値を出してくれるとは限らないからです。そのため、シミュレーションの条件や根拠を聞いて、より詳細な条件で算出している業者のデータを信じるようにしましょう。

定期的なメンテナンスを欠かさない

太陽光発電の元を取りたいなら、定期的にメンテナンスを行うことも重要です。定期的にメンテナンスすると太陽光パネルの寿命を延ばしやすく、その分初期費用の回収が簡単になります。

異常が見られない時はメンテナンスを見送りたくなるかもしれませんが、見えない部分で不具合が起きている可能性もあります。万が一、放置して故障してしまった場合、高額な費用が掛かることがあるため、問題がなさそうでも欠かさずメンテナンスしましょう。

メーカーの保証などにメンテナンス項目が含まれている場合は、無償や安価で依頼することができます。そのため、ランニングコストの心配もいらないでしょう。

太陽光発電のメンテナンスについてさらに詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

卒FIT後は買取単価が高い会社を選ぶ

卒FIT後も売電を続けつつ、できるだけ確実に元を取りたいなら、買取単価が高い会社を選ぶようにしましょう。卒FITとは、国が定めた固定価格で電気を買い取ってもらえる「FIT制度」の適用期間が終了した後のことです。

卒FITになると売電価格が大幅に下がり、場合によっては半額になることもあります。ただし、電力会社によっては条件を満たすと売電価格が上がる可能性もあるため、高く売電できる会社を見付けることが重要です。

また、良い条件の売電先が見つからない時は、蓄電池を導入して自家消費し電気代を節約した方がお得な場合もあります。そのため、卒FIT後は売電にこだわらず、最も効率良く元を取れる方法を一度検討するのがおすすめです。

なお、次の記事ではおすすめの売電会社を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

蓄電池と併用する

太陽光発電の元を取りやすくしたいなら、蓄電池を併設するのがおすすめです。太陽光発電と蓄電池を併用すると相乗効果を得られ、費用の回収速度が3年ほど早くなります。

また、補助金額が上がる可能性や業者からセット割を受けられる場合もあるため、お得なことばかりなのです。そのほかにも蓄電池を導入するメリットは多くあります。

次の記事では蓄電池のメリット・デメリットを紹介しているので、あわせて参考にしてください。

なお、蓄電池には様々な種類があります。まだ知識がなくどの種類が良いのか分からない方は、次の記事も参考にしてください。

太陽光発電で元を取るならいつ導入すべき？

太陽光発電で元を取りたいなら、いま導入するのがおすすめです。というのも、2021年までは初期費用が下降傾向にあったものの、直近の導入費用は上昇傾向にあるためです。

待っていればまた費用が下がる可能性もありますが、物価の高騰が続いていることから、さらに上がり続ける可能性も高いでしょう。その点、2024年時点の初期費用の相場ならシミュレーション通り回収できるため、購入するなら今がおすすめです。

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まとめ

本記事では、いま太陽光発電を導入しても元が取れる理由や、コストを回収できるケースとできないケースを紹介しました。太陽光発電は、基本的に元を回収できる設備です。

ただし、発電量があまりにも少ない場合や初期費用が高すぎる場合は例外となるため注意しましょう。また、補助金を利用するなどのポイントを押さえると、より元が取りやすくなります。

本記事を参考に太陽光発電の元を取る方法を試し、大きな経済効果を実感してみてください。